大企業が社債を発行したり金融機関から資金を借り入れて借入金を増やしています。景気が穏やかに回復傾向にある今、更なる事業拡大を図るため、M&A(吸収合併)や設備投資を増やすことで、事業規模を拡大し収益拡大を急いでいることが背景としてあります。
有利子負債とは?
有利子負債とは、企業が社債を発行したり、金融機関から資金を借り入れる際に、お金のレンタル料に該当する「利子」を債権者に支払う必要があります。借り入れた金額は、債権者に最終的に返済する必要がありますが、利子付きで返済する必要がある借入金のことを有利子負債といいます。
2017年3月15日の記事で記載していますが、企業は、会社設立時に用意した資金である自己資本を手元に、金融機関などから資金を借り入れることで事業を行い、そこから得た収益を債権者に返済しながら事業活動を行います。
手元の自己資本だけでは、事業活動の規模の拡大にはどうしても時間を要してしまいますが、借り入れを行いレバレッジ(テコの原理)を活用することで、事業規模の拡大を早めることが出来るわけです。
M&A(吸収合併)や設備投資が加速していることが背景に
大企業が、有利子負債を増やしている背景としてはM&A(吸収合併)や設備投資を加速させていることにあります。
M&Aは、英語でMergers and Acquisitionsの略で日本語で表現すると「吸収合併」と言う意味ですが、複数の企業を合併したり、ある企業が他の企業の株式や事業を買い取る買収を行うことです。M&Aを行うことで、自社で実績を積み上げていくより、実績がある企業や事業を買収することで、事業規模の拡大を早め、早期に収益拡大に寄与できます。近年では、ソフトバンクが英国の半導体設計大手のアーム・ホールディングスを買収したことは記憶に新しい出来事です。
M&Aの金額は、2017年4月29日付の日本経済新聞朝刊によると、「2016年のM&Aの金額は16兆6千億円と、1999年以来の高水準だった。」としています。
設備投資は、近年では人手不足が深刻化している中、機械などを導入することで生産の自動化や効率化を図り収益拡大を狙います。景気が穏やかに拡大している今、製品やサービスの需要が増加していることから設備投資を行うことで供給を高めていきます。
近年では、2020年に開催が予定されている東京五輪に向けて都市開発や不動産などの設備投資も加速しており、同日付の日経新聞では「銀行の設備投資向け新規貸し出しも16年に48兆3千億円と19年ぶりの水準に達した。」としています。
2016年末時点の有利子負債額は241兆4000億円
2017年4月29日付の日本経済新聞朝刊によると「資本金10億円以上の大企業の有利子負債は16年末時点で241兆4千億円。年末時点の比較では、最高だった1998年末の234兆2千億円を上回った。」としており、有利子負債の金額は確実に増えていることは裏付けができます。
近年では2016年2月に日銀が行ったマイナス金利により金利が下がる中、低金利を利用して社債の借り換えニーズも増えていることも考えられます。
企業は借り入れを増やすことで経営効率を高めることができれば、投資した金額からどれだけの利益を生み出せるかを表す指標である「自己資本利益率(ROE)」の向上につながりますが、企業が保有している総資本における負債の割合が高くなった場合、総資本における自己資本の割合を示す「自己資本比率」が低下してしまいます。
元々日本企業は総資本における自己資本の割合が低く、自己資本比率が低い傾向にあることが指摘されていましたが、近年では投資家の裾野が広がったことで、経営への監視が強まっています。有利子負債を増やし収益を拡大するだけではなく、自己資本比率も強化することで景気低迷にも耐えうる企業体力を維持することが求められます。