日本学生支援機構が出身大学別に延滞率を公開。私立大の延滞率が高い状況に

日本学生支援機構は、貸与型奨学金を3ヶ月以上延滞している者の割合を出身学校別に同機構ホームページにて公開しました。

今回の調査では、2010年から2014年に学校を卒業し返済義務がある者が対象となっており、調査データでは、公立大に比べ、私立大出身者の延滞率が高いことがわかりました。

約3600校を対象に調査を実施

日本学生支援機構は、大学、大学院、短期大学、高等学校、専修学校の約3600校を対象に延滞率の割合を調査しました。

学校別に見ると、延滞率としては大学が1.3%、大学院が0.4%、短期大学が1.5%、高等学校が0.7%、専修学校が2.3%となっており、専修学校が一番多く、続いて、短期大学、大学という順に延滞率が高くなっています。

専修学校は、専門的な職業に付くために大学の教育とは異なり実践的な教育を行う専門学校などが該当しますが、実践的な技能を身につけられることから就職率は高いとされていますが、日本の一般的な大手企業などが採用に積極的ではないことが指摘されています。

また、専門的な職業人として働くことが多いため、卒業後の段階では見習いと同等の地位となることで一般的な企業と比べると収入が低いなどで返済が厳しくなるケースも多いようです。

国立大学の延滞率は0.6%、私立大学は1.5%

出身大学の中で国立大学、公立大学、私立大学別に平均延滞率を見てみると、国立大学の平均延滞率は低く0.6%、公立大学は0.9%であるのに対し、私立大学は1.5%と延滞率が高い状況であることが明らかとなっています。

私立大学別に延滞率を見てみると、早稲田大学が1.0%、慶應義塾大学が0.7%、上智大学が1.0%となっています。

私立大学は、国公立大学に比べると、入学や授業料など金額が高くなる傾向にあることに加え、自宅外からの通学などでは住居費や生活費などの経費も多く発生することから必然的に借入金額が高額になるケースが多いようです。

日本学生支援機構が平成26年に調査した「平成26年学生生活生活調査」によると、学費と生活費を合わせた年間出費額は国立が約149万円、公立が142万円、私立が197万円となっています。

そのため、借入金額が高額になったことで、卒業後の返済金額が高額となり、奨学金返済が厳しくなることにつながっていると考えられます。

延滞のきっかけは家計収入の減少

奨学金返済が困難になっていることが社会問題となっている中、延滞がはじまるきっかけはやはり「家計収入の減少」にあります。

同機構が平成27年に調査した「平成27年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」によると、家計の収入が減少したことによる延滞は76.1%、家計の収入が増えたことによる延滞は50.9%、忙しいという理由による延滞は23.1%、病気や事故、災害による延滞は22.6%となっています。

また、延滞が継続している理由として上げたのが、収入が低いことによる返済困難が67.2%を占めています。

一方で、返済が困難になった時に返還期限が猶予できる「返還期限猶予制度」の認知度が低いことも指摘されており、延滞者は督促を受けてから猶予制度があることを知った割合が46.7%、知らないが32.6%となっています。

奨学金問題は制度への理解とコミュニケーション不足が要因

奨学金の問題は、高校卒業時に何となく進められて申し込みをしているものが多く、借り入れを行う者が同機構が提供している奨学金制度について十分な知識が無いことに加え、同機構でも情報発信が不十分であることも問題点として考えられます。

借入者が同機構の奨学金制度に対して十分な理解があれば、返済が厳しくなる前に対策を講じるなどのあらゆる対応が可能になります。

そのため、借入者自身が同機構の奨学金制度について十分な理解を行うとともに、同機構側も学生や返済者への積極的な情報発信を行い、奨学金制度について十分な理解を得られる体制を構築していく必要があると言えます。

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