「生命保険で相続税対策になるって本当ですか?」
「生命保険で相続税対策になる理由って何ですか?」
「生命保険の相続税の節税方法を教えてください。」
生命保険に入っていると相続税が安くなる非課税枠というものがあります。今回は、生命保険の非課税枠で相続税を節税する方法について解説します。
生命保険の死亡保険金に相続税がかかる?
生命保険の中でも、死亡保険金を相続人が受け取る場合には、相続の対象の財産とみなされます。
本来、相続財産は、被相続人の財産であり、保険会社から相続人に支払われる保険金は、相続財産ではないのですが、相続税法上では生命保険金を相続財産とみなし、相続税を課税します。これお「みなし相続財産」と言います。
生命保険の死亡保険金がみなし相続財産になる要件
- 契約者 = 被保険者 = 亡くなった方(被相続人)
- 保険金の受取人 = 法定相続人
↓ - 死亡保険金 = みなし相続財産 → 相続税の対象
あくまでも、保険に入っていた方が亡くなって、その保険金の受取人が法定相続人の場合に、相続税の対象になるのです。
相続税の課税対象になる死亡保険金の非課税限度額
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
※相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。
※法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
※法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。
法定相続人とは
民法で定められた被相続人の財産を相続できる人のこと
- 配偶者
- 第1順位:子ども、代襲相続人(直系卑属)
- 第2順位:親、祖父母(直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人(傍系血族)
配偶者は常に法定相続人になり、基本的には「配偶者+第1順位」、第1順位がいなければ第2順位、第2順位がいなければ第3順位という順番になってきます。
上記でわかる通り、孫は法定相続人に該当しないため、非課税枠の人数には含まれません(孫が代襲相続人となっている場合は除く)。
生命保険の死亡保険金には非課税があります。財産として預金などをしていた場合と、生命保険の死亡保険金で受け取りをする場合では、死亡保険金は非課税枠がある分、相続税が安くなることになります。
相続税計算方法
相続税の税率
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
試算条件
- 相続財産合計:1億円
- 死亡保険金:2,300万円
- 相続人:配偶者、子(2人)
相続税の計算
1.すべての財産のチェック
貯金や株、不動産などのプラスの相続財産から、住宅ローンなどのマイナスの相続財産を引いたもの
相続財産合計:1億円
2.基礎控除額の計算
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 相続人の人数:3人 = 4,800万円
3.死亡保険金のみなし相続財産を計算
みなし相続財産 = 死亡保険金:2,300万円 - 500万円 × 相続人の人数:3人 = 800万円
4.課税対象額の計算
相続財産合計:1億円 - 基礎控除額:4,800万円 + みなし相続財産:800万円 = 6,000万円
5.相続人ごとの課税対象額の計算
配偶者が法定相続分の2分の1を相続:3,000万円
子が法定相続分の2分の1を2人で分けて相続:1,500万円
6.相続税額
配偶者:3,000万円 × 15% - 控除額:50万円 = 400万円
子:1,500万円 × 15% - 控除額:50万円 = 175万円
子:1,500万円 × 15% - 控除額:50万円 = 175万円
合計:750万円
仮に、死亡保険金:2,300万円ではなく、貯金をしていた場合
試算条件
- 相続財産合計:1億2,300万円
- 相続人:配偶者、子(2人)
相続税の計算
1.すべての財産のチェック
貯金や株、不動産などのプラスの相続財産から、住宅ローンなどのマイナスの相続財産を引いたもの
相続財産合計:1億円
2.基礎控除額の計算
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 相続人の人数:3人 = 4,800万円
3.死亡保険金のみなし相続財産を計算
みなし相続財産 = 0円
4.課税対象額の計算
相続財産合計:1億2,300万円 - 基礎控除額:4,800万円 + みなし相続財産:0円 = 7,500万円
5.相続人ごとの課税対象額の計算
配偶者が法定相続分の2分の1を相続:3,750万円
子が法定相続分の2分の1を2人で分けて相続:1,875万円
6.相続税額
配偶者:3,750万円 × 20% - 控除額:200万円 = 550万円
子:1,875万円 × 15% - 控除額:50万円 = 231万2500円
子:1,875万円 × 15% - 控除額:50万円 = 231万2500円
合計:1012万5000円
となります。
生命保険の節税効果
前述した試算結果では
- 生命保険に2300万円分加入していた場合 → 相続税総額:750万円
- 生命保険ではなく2300万円分を貯金していた場合 → 相続税総額:1012万5000円
生命保険の非課税枠を利用することで、貯蓄をしていた場合と比較すると、約300万円以上も、相続税が安くなるのです。
これも当然のことで
- 非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
分、生命保険の方が課税対象の相続財産が減っているのですから、必然的に相続税も減ることになります。
法定相続人が多ければ多いほど、生命保険の死亡保険金を利用することで、相続税が安くなるのです。
この節税に向いているのは
一生涯保障が続く終身保険です。
終身保険に加入していれば、最終的には保険金が受け取れるので、必ず上記の節税方法が使えることになるのです。
まとめ
生命保険の死亡保険金は、受取人が法定相続人の場合、みなし相続財産として相続税が課税されます。
ただし、
- 非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
という非課税枠がある分、相続税が安くなります。
相続税対策を考えている方は、終身保険の加入を検討しましょう。定期保険などの満期がある保険の場合は、満期になってしまうと保障が亡くなってしまうため、死亡保険金が出るかどうかは不確かだからです。
ただし、相続税がそもそも発生しない(控除額以下の相続財産の方の)場合は、生命保険の控除額も使う必要がなく、そもそも相続税が0円なので、節税効果はあり前ん。ご自身の相続財産、またはご両親の相続財産をしっかり把握した上で、生命保険を利用した相続税の節税を検討しましょう。