自動車保険のなかでも、保険料の割合を多く占めているのが「車両保険」です。
その車両保険とは、ご自身の自動車が事故によって破損した時の、買替え費用であったり、修理できる範囲の損害であれば、修理をする時に車両保険から補えるようになります。
その車両保険を使うことで、保険の等級に影響が出てくることはご存知でしょうか?
以前は「等級据え置き事故」といって、等級ダウンを防ぐ特約もあったのですが、既に廃止されてしまいました。
現在では等級が、下がると保険料が高くなるだけではなく、事故をしたら同じ等級でも「事故あり」という別の割引率が適用され、かなりのダメージを受けることになります。
では、車両保険を使うべきか?どうかの判断について解説いていきます。
車両保険を使って等級ダウンとなる事故
同じ自動車事故でも、車両保険を使うことで保険の等級が「1等級ダウン」の事故と「3等級ダウン」の事故に別れています。
基本的に自動車事故によって保険を使うと「3等級ダウン」になると思って間違いはありません。
その中で例外として、例えば、
- 飛び石による窓ガラスの破損
- いたずらによる落書き
- カーナビの盗難
- 火災などの災害
などによって、自動車が損害を被って車両保険を使うことになった場合には「1等級ダウン」となります。
それ以外の自動車での交通事故、ご自身で運転していて車庫入れに失敗した際の自損事故などで、車両保険を使ってしまうと「3等級ダウン」の事故として扱われます。
等級ダウンとなると割引率が高くなるため、保険料もそれに比例して高くなってきます。
車両保険を使ったあと、事故によって保険を使うようなことがなければ、1等級下がった場合には1年後に、3等級下がった場合には3年待てば、事故前の等級に戻ることはできます。
事故をして等級が3等級ダウンになったから、他社に乗り換えようと考える方もいるかもしれませんが、等級は「損害保険会社で共通」のため、他社に乗り換えても3等級ダウンから、自動車保険の契約を始めることになります。
このように、車両保険を使うことで、自動車保険の契約者はかなりのダメージを受けてしまいます。
安易に自動車保険に車両保険をつけていたから、保険を使えば良いかというとそうでもなく、車両保険と使ってしまうことでの等級ダウンの影響で、保険料が「思った以上に高くなってしまう」こともあるからです。
等級ダウンだけではない事故あり係数について
「車両保険を使ってしまうことで、等級ダウンになるだけなら、長くても3年経てば、もとの等級に戻るなら、それくらい我慢できるから問題ない!」
と思ってしまうかもしれません。
以前は、確かに等級ダウンのあとに事故がなければ、1等級ずつ上がり割引も高くなるために、それほど大きなデメリットに感じていませんでした。
ただし、保険の改定により、等級ダウンになることで、更に「事故あり係数」というものを当てはめるようになっています。
この「事故あり係数」は1等級ダウンなら1年間、3等級ダウンの場合には、3年間と等級ダウンの数と同じだけの年数を当てはめることで、その間は事故があって保険を使った場合のように「事故あり等級の割引を適用」しますということになります。
「事故あり」等級というのは、事故がない10等級と事故歴がある10等級では、同じ10等級でも割引率が異なり、事故がある等級のほうが、保険料が高くなるということです。
そのことにより、車両保険をつかったあとに、元の等級に戻るまでの間は、今まで以上に保険料アップがいなめなくなっていまします。
その「事故あり係数」が適用になるのは、純新規6等級を基準に、7等級以降からです。
5等級以下の場合は、もともとデメリット等級といって、割引率が低く保険料が高い設定になっています。
ましてや、3等級以下のデメリット等級では、割引ではなく、割増率が適用となるます。ここまで等級が、下がるようなことがないようにしたいですね。
表1.等級と割引率
等級 | 割引 | 事故ありの場合の割引 |
---|---|---|
20等級 | -63% | -44% |
19等級 | -55% | -42% |
18等級 | -54% | -40% |
17等級 | -53% | -38% |
16等級 | -52% | -36% |
15等級 | -51% | -33% |
14等級 | -50% | -31% |
13等級 | -49% | -29% |
12等級 | -48% | -27% |
11等級 | -47% | -25% |
10等級 | -45% | -23% |
9等級 | -43% | -22% |
8等級 | -40% | -21% |
7等級 | -30% | -20% |
6等級 | -19% | |
5等級 | -13% | |
4等級 | -2% | |
3等級 | 12% | |
2等級 | 28% | |
1等級 | 64% |
等級と割引率の例
11等級で事故により、車両保険を使った場合(仮に保険料10万円として)
1等級ダウン事故
11等級から10等級に下がります。
保険料77,000円になり、事故なしの9等級の保険料55,000円よりも、22,000円も保険料が高くなっています。
3等級ダウン事故
11等級から8等級に下がります。
保険料78,000円になり、事故なしの9等級の保険料60,000円よりも、18,000円も保険料が高くなっています。
2年目は9等級にあがり、保険料60,840円になり、事故なしの保険料44,460円よりも、16,380円の差があります。
3年目は10等級にあがり、保険料46,846円になり、事故なしの保険料33,463円よりも、13,383円の差があります。
車両保険を使って等級ダウンになった後に、割引率の低い等級となるため、等級が元に戻るまでのペナルティが、かなり大きくなっていることがわかりますね。
それでは、
「車両保険を使うことで保険料が高くなるなら、保険を使わずに自己負担で修理したほうが良いのでは?」
と思うかもしれません。実際にそういうケースもあるため車両保険を使う際には、修理費用と保険料の差額を出してから検討することをおすすめします。
事故後に車両保険を使うべきか?使わないべきか?
せっかく自動車保険に入っているから、安心と思って車両保険を使ってしまうことのダメージはできるだけ、避けたいものですね。
「では、車両保険と使うべきかどうかの判断は、何を基準にしたら良いのでしょうか?」
1等級ダウンの事故と、3等級ダウンの事故を例に、10等級から等級ダウンする場合に、車両保険と使った保険料と車両保険と使わなかった保険料の差額をあらためて、検証してみることにしました。
車両保険を使った場合の保険料(1等級ダウン)
10等級から、1等級へ下がった9等級の保険料です。
- 9等級(事故あり-22%)、保険料:78,000円
車両保険を使わなかった場合の保険料
10等級から、9等級へと1等級上がった11等級までの保険料です。
- 11等級(事故なし-47%)、保険料:53,000円
差額保険料:25,000円
車両保険を使った場合の保険料(3等級ダウン)
10等級から、7等級へ下がり「事故あり係数」が終わる9等級に戻るまでの保険料です。
- 7等級(事故あり-20%)、保険料:80,000円
- 8等級(事故あり-21%)、保険料:79,000円
- 9等級(事故あり-22%)、保険料:78,000円
合計保険料:237,000円
車両保険を使わなかった場合の保険料
10等級から、11等級へと1等級ずつ上がっていき、13等級までの保険料です。
- 11等級(事故なし-47%)、保険料:53,000円
- 12等級(事故なし-48%)、保険料:52,000円
- 13等級(事故なし-49%)、保険料:51,000円
合計保険料:156,000円
差額保険料:81,000円
車両保険を使った場合と、使わなかった場合の保険料の差額は、1等級ダウンの場合で、25,000円、3等級ダウンの場合には、81,000円になりました。
このことからも、車両保険と使うべきかどうかという時には、まず修理工場で車両の修理費用を見積もってもらった後に、保険会社へ車両保険を使った場合の保険料を、試算してもらうと良いでしょう。
自動車保険の保険料は、商品改定が入ると多少の誤差があるものの、保険会社は概算見積もりをしてくれます。
上記のように車両保険を使った保険料と、使わなかった保険料を出してもらうことで、自動車の修理費用とどちらが、高いか判断してみると、車両保険を使うべきかとうか明確になってきますので、おすすめします。
事故の状況によっては、自己負担で修理してしまったほうが、車両保険を使った後の保険料が高くなるよりも、良いケースは結構あります。
こういったことをよく理解しておかないと、保険と使ったらペナルティがあり、
「保険料が高くなってなんだか損をしてしまった・・・。」
ということになり兼ねないため、自動車保険で等級ダウンの事故の際には充分注意したい点ですね。
自動車事故で修理の見積もりについて
「車両保険を使うことで、保険料が大幅にアップするようであれば、まず修理費用を見積もってから検討した方がいいということですが、事故をして自動車の修理のことについて、どこに相談したら良いでしょうか?」
突発的な事故で冷静に判断できず、とりあえず自動車を購入したディーラーでよいのでは?と思ってしまう方もいるようです。
しかしながらディーラーに相談しても、修理のことまではわからないため、下請けの修理工場へ問い合わせるとなり、2度手間になってしまいます。その下請けというのが、「板金塗装工場」です。
ご自身で板金都道工場へ、事故で修理をしてほしい自動車を持ち込んで、修理費用を見積もってもらうのが最も早い方法です。
ただし、自動車保険で修理工場まで運んでもらえる、ロードサービスをつけているなら、そちらを利用しましょう。
ロードサービスだけの利用では、「保険の等級ダウンに繋がらない」からです。
また、修理が終わるまでの代車費用もロードサービスで補償されていることもあり、事前に確かめておくことをおすすめします。
ちなみに、ロードサービスはまず保険会社へ連絡することで、利用できるサービスですから、ご自身で修理工場に持っていった後に保険会社へ、ロードサービスの請求をしても、取り扱ってもらえないため注意が必要です。
それでは、板金塗装工場についてですが、修理費用とひと口に言っても、実際にどの程度の修理を希望するかによっても、修理費用は大きく異なってきます。
- とにかく、キレイな仕上がりでもと通りになるよう、修理費用が多少高くでも良いから修理をしてほしいのか?
- そこそこのクオリティーで目立たなくなれば良いから、修理費用を安く仕上げてほしいのか?
と言ったように、直接ご自身で板金塗装工場に相談することで、要望も聞いてもらえるため、修理費用にも差がでてきます。
先に修理費用を見積もってもらい、保険会社に事故後の保険料を試算してもらっても良いのですが、基本的な保険料は変わりません。
そのため、事故後の保険料を聴取してから、板金塗装工場に「それより修理費用が安くなるか?」といった相談を持ちかけると方法が良いでしょう。
車両保険と使った場合は、補償内容や他社も検討する
どうしても、車両保険を使うような事故にあった場合ですけれど、1等級ならまだしも、3等級下がって保険料が高くなるような時には、現在の補償内容を見直すことで保険料を安くしたり、保険期間の満期まで待って、次回の更新時に他社へ乗り換えることを検討する方法もあります。
例として、車両保険を使ったあとには「特約などを外してみる」といった方法をすることで、しばらく補償内容を見直し「事故あり係数」が終わるまで、保険料を安くすることもできます。
具体的には、一旦車両保険を外してしまい、等級が元に戻ってから、車両保険を追加するといった方法ができます。
この場合は、同じ保険会社でも行えるため、車両保険を使ってしまったがために、保険料が高くなる場合のひとつの回避手段として使えます。
また、他社へ乗り換えの際は、他社でも等級ダウンの等級で「事故あり係数」を引き継ぐことには変わらないのですが、割引率よりも他社で見直すことで、保険料が安くなる場合もあります。
あわせて補償内容も見直し、より良い自動車保険を選ぶことのできる可能性もあるため、検討してみてもよいでしょう。
事故が多発している契約者や、あまりにも低い等級の方は他社でも引き受けできないことがあるため、ケースバイケースではあります。
車両保険と使う前には、修理費用を見積もってから
自動車保険を契約して、車両保険もつけていたから、
「事故があった際には当然のように、車両保険を使うべきなんだ。」
と思っていた方も多いかもしれません。
自動車保険は保険を使うことで、等級に影響があります。保険料を決めるための割引率にかかってくる、等級ダウンについては、少し意識してみたほうが良いでしょう。
自動車事故により、全損のような場合は、新しく自動車を買い換えることになるため、車両保険を使うことに、あえてためらうこともないですね。
まして、ローン返済中なら保険金からローンを支払うこともできるため、そういう時こそ車両保険を大いに使いましょう。
問題は、事故によって修理できる範囲の場合ですね。ちょっとした傷ならDIYでも直せますが、そこそこ大きな凹みや、塗装の剥離になってくると、もちろんプロフェッショナルに修理してもらう方が良いわけです。
板金塗装工場では、希望にあわせて見積もりをしてもらえるでしょうから、修理が必要な時は修理費用と、等級ダウンすることでアップする保険料の差額を確かめてから、車両保険を使ったほうが良いか判断することが大切だと理解できたことでしょう。
車両保険を使うことで「3等級ダウン」の事故と、「1等級ダウン」の事故でもかなり保険料に差がでてきます。
1等級ダウンくらいなら、翌年に事故なしをキープできればすぐにもとの等級に戻れることもあり、車両保険を使っても、ご自身にそれほど大きな影響を受けない場合もあります。
また、自動車保険の等級が低いほど、事故をしたときの等級ダウンの影響を受けやすくなっています。
高い等級で事故をする場合だと、11等級以降の割引は1%ずつしか変わらないために、1等級ダウンくらいなら、それほど気にならないこともあるでしょう。
やはり、低い等級で事故をしてしまうのとでは、「保険料へのダメージの幅」がかなり違ってきます。
実際に、車両保険を使う必要があるような事故で考えられるケースというのは、そう簡単に修理できないけれど、まだこの自動車を大事にしていたいとか、大破して全損になったから、新い自動車に買い換えたいという時くらいになるでしょう。
頻繁に車両保険を使うと、等級がなかなか上がっていかずに、高い割引率の恩恵を受けられないことになるため、以上のようなことから車両保険を使うべきかどうか、よく検討してから車両保険を使うことをおすすめします。