上場企業の「実質無借金経営」が増加!そのメリットと懸念点とは?

上場企業が手元に持つ「資金」が利子付きの借金である「有利子負債」より多い「実質無借金経営」の企業が増加しています。その背景にあるのは企業業績の改善で、日本企業の経営は安定するメリットがありますが、資本効率の低下を懸念するデメリットもあります。

企業業績の改善で財務体質が改善へ

企業における実質無借金状態とは、企業が保有している現預金や有価証券を合計した手元資金が、長期的に借り入れている利子付きの借金「有利子負債」の金額を超えている状態の事です。

企業は、事業活動を行うにあたり、資本金を手元に金融機関などからお金を借り入れて事業活動を行うことで、従業員を雇い、設備投資を実施し、多くの顧客に商品やサービスを提供することで収益を得て、自己資本を大きくしていきます。

実質無借金経営が増えている背景としては企業業績の改善にあります。2017年5月20日付けの日本経済新聞朝刊の記事によると、上場企業の2017年3月期の連結決算で純利益が前年比18%増と過去最高を記録したことを報じており、確実に稼ぐ力を付けていると言えます。

稼いだお金を有利子負債の削減に振り向けることで、「実質無借金」となり経営の安定を図る狙いがあると言えます。2017年6月12日の日本経済新聞朝刊によると「実質無借金の企業が上場企業に占める割合は昨年度で58%と、前年度から1.6ポイント上昇した。」としています。

上場企業の自己資本比率は40.4%と経営の安定度は向上

上場企業が持っている自己資本と借入金を合わせた「総資本」に占める自己資本の割合がどの程度示すかを表す指標である「自己資本比率」について、日本経済新聞社の調査によると2016年度は40.4%となり、昨年と比べ0.8%増加したとしており、1982年度の20.6%の約2倍まで上がっています。

企業の経営安定度を図る目安である自己資本比率は30%であることを考えると、日本企業の経営安定度は大幅に向上したことが伺えます。

経営は安定するが資本効率の低下が懸念される

借金が減る状況は、企業経営が安定するというメリットはありますが、稼いだお金を貯め込むことになり「内部留保」が増加することになります。そのため、設備投資など今後の事業成長に向けた投資に振り向けたり、株主への還元などに振り向けるといった資本効率の向上が望まれます。

日本企業は株主から預かった資本を元にどれだけ利益をあげたかを示す「自己資本利益率(ROE)」が低いことが指摘されています。例えば、10万円の利益を稼ぐために100万円の資本を使った場合のROAは10%となります。

2017年6月18日の日本経済新聞朝刊によると日本企業の場合2016年度は8.6%であるとしており、世界の主要企業のROAが10%前後であることを考えると、資本効率の向上が求められると言えそうです。

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