個人版民事再生の適用者が2016年度13%増加

自己破産をせずに、借入金の返済額を減らすことができる「個人版民事再生」の適用者が増加傾向にあるようです。2017年7月4日の日本経済新聞朝刊の記事によると「2016年は前年比13%増の9602件と2年連続で増えた」としており、借入金の返済に苦労している個人が増えていることが伺えます。

個人版民事再生は住宅を手放すことなく返済額を軽減

個人版民事再生とは、多重債務に苦しんでいる個人に対して、残りの債務を3年間で返済するとう原則の元、返済額を軽減を行います。

民事再生と聞くと、企業が経営に行き詰まった場合、企業の経営を立て直しを図るための制度というイメージがありますが、この制度は個人に対しても適用することができます。

個人版民事再生は、大きく分けて2種類あり、個人事業主を対象として「小規模個人再生」と給与所得者(サラリーマン)を対象として「給与所得者等再生」があります。今後も継続的に安定収入が見込めることを条件に、多重債務を軽減したいという場合にこの制度を利用します。

個人版民事再生と自己破産の違いは住宅や財産の手放しが不要

個人が再建する制度として「自己破産」がありますが、今回紹介している個人版民事再生と自己破産の大きな違いは、住宅や財産の手放しが不要な点です。

自己破産を適用して場合、基本的は借金は全て無くなりますが、その反面、所有していた住宅や財産などを手放す必要があります。一方で、個人版民事再生は、住宅や財産を手放す必要はありません。ただし、自己破産とは異なり、借金が無くなるわけではなく、あくまでも金額が減額に留まり、借金が無くなるわけではありません。

自己破産と個人版民事再生に共通していることは、信用情報機関に自己破産もしくは民事再生の手続きを行ったことが記録されるため、クレジットカードの発行や新たなローンを利用することは難しくなります。

個人版民事再生の利用者数は減少傾向から再び増加に転じる


個人版民事再生利用者数推移(最高裁判所のデータを元に筆者作成)

個人版民事再生の利用者数は、最高裁判所のデータによると、2007年の27672人をピークに右肩下がりで減少傾向にありました。2014年には1万人を割り8374人、2015年には7668人となりました。ただし、今回調査対象の2016年年度は9602件となり、再び増加したことがわかります

同日付けの日本経済新聞朝刊には「銀行が住宅ローンの借り換え客に対し、カードローンの契約をセットで勧めている例もあるという。」と記載されており、個人版民事再生の件数が増加した背景としも、2016年2月に日銀が施行したマイナス金利政策により、銀行の利ざやが縮小したことから、金利収入が見込めるカードローンの販売を強化したことも少なからず影響をあたえていることも考えられそうです。

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