動産担保融資(ABL)が広がる、事業融資手法の多様化に期待

近年、不動産に頼らず、売掛債権や設備、原材料といった動産を担保にした融資「動産担保融資(ABL)」が広がっています。

金融庁が動産担保融資(ABL)を後押ししており、各銀行に対して、不動産に限定することなく融資先の事業の将来性を評価した上で融資する様に働きかけており、資金調達の多様化に繋げる狙いがあります。

動産担保融資(ABL)とは?

動産担保融資(ABL)とは、英語ではAsset Based Lendingと呼ばれており、融資先の企業が持っている売掛債権や設備、原材料などを担保に融資を行う手法です。

企業は事業活動を行う場合、資本金を手元に、商品やサービスを開発し、それを生産したり、販売したりすることで収益を得ることで、利益を確保し自己資本を大きくして行きます。ただし、自己資本のみでは事業を成長させるには時間を要してしまうため、借り入れを行うことで、自己資本と借入金を手元に事業活動を行います。

ABLでは、この様な事業活動におけるサイクルに着目し、企業が現在保有している商品やサービスの市場価格などから事業における収益性を判断し融資を行います。

動産担保融資(ABL)は年々拡大傾向にある

日本国内においてもABLを活用して資金調達が広がっています。金融庁では、資金調達の多様化に加え、各銀行が不動産担保に過度な依存から脱却し、事業の収益性に着目して融資を行うことで、企業の事業拡大を後押しを行い、経済の活性化に繋げていく狙いがあります。


ABL融資額及び実行件数(経済産業省のデータを元に筆者作成)

経済産業省の調査データによると、2012年度のABL実行件数は5724件だったのに対し、2015年度は12,302件に拡大しています。また、融資金額についても、2012年度は4986億2900万円から2015年度は9963億3200万円まで拡大しています。

2015年度のABL実績では、担保とする動産の種類については、機械設備が4473件と一番多く、続いて、債権が3630件になっています。

動産の資産価値減少や災害などを保証する専用保険も登場

ABLは不動産とは異なり、流動性が高い資産になりますので、その資産価値が十分にか価値を有している必要があります。

企業が公開する賃借対照表(P/L)などの帳簿上では資産価値が高くても、時間の経過とともに、時代のニーズに合わなくなり資産価値が減少してしまい、万が一の場合に回収できなければ意味がありません。また、火事や地震、津波などの災害により設備が失われてしまった場合、資産が消失することになるため資産がゼロとなり、回収不能になるリスクがあります。

日本において、現状としてはこの様な流動資産に対する評価手法が確立されていない問題があり、銀行は積極的に融資しづらいという問題があります。

このような状況の中、あいおいニッセイ同和損害保険では、金融機関向けに融資先の企業における動産が回収できない場合に備えた保険「ABLトータルパッケージ」を開発しています。

出始め段階の動産融資を保証するサービスが広がれば、動産融資が今後さらに拡大し金融機関の収益改善に寄与するだけではなく、中小企業の事業成長を後押しし経済活性化につながることに期待できると言えそうです。

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