遺族年金とは?受給資格、支給額、受給手続き方法をわかりやすく解説

「遺族年金っていくらもらえるの?」
「遺族年金は、誰がもらえるの?」

生命保険の必要保障額を計算するうえでも「遺族年金はいくらなのか?誰がもらえるのか?」は大きなポイントと言えます。今回は、遺族年金とは?受給資格、支給額、受給手続き方法をわかりやすく解説します。

遺族年金とは?

遺族年金とは

家計の稼ぎ手の人(国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方)が何らかの理由で亡くなった場合に、遺族に対して支給される公的年金のこと

を言います。

世帯の中で、稼いでいる方が急になくなってしまった場合に、残された遺族の生活が苦しくなってしまうケースは少なくありません。このような状況を公的に遺族をサポートするための公的年金が「遺族年金」ということになります。

遺族年金は

  • 亡くなった人がどのような年金に加入していたか?
  • 亡くなった人がどのように年金に加入していたか?
  • 遺族がどういう方か?

によって、受給金額が変わってきます。

遺族年金の受給者と受給できる年金の種類

死亡者 対象の人 支給年金の種類
自営業(国民年金加入者) 18歳未満の子のある妻 遺族基礎年金
子の無い妻 死亡一時金
寡婦年金
会社員(厚生年金加入者)・公務員(共済年金加入者) 18歳未満の子のある妻 遺族基礎年金
遺族厚生年金
子の無い妻(40歳未満) 遺族厚生年金
子の無い妻(40歳〜65歳) 遺族厚生年金
中高年齢寡婦加算

亡くなった方・受給者によって

  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金
  • 死亡一時金
  • 寡婦年金
  • 中高年齢寡婦加算

が支給されることになります。

遺族年金の種類と受給条件・受給額

遺族基礎年金

遺族基礎年金とは

国民年金の被保険者が亡くなった時に受給できる遺族年金のこと

を言います。

遺族基礎年金の受給対象

亡くなった人によって生計を維持されていた以下の遺族が対象です。

  • 子のある配偶者

  • ※18歳未満の年度末までの子(障害のある子は20歳未満)
    ※妻が死亡して夫が受給する場合は妻の死亡時に夫の年齢が55歳以上であること
証明すべき情報

遺族基礎年金を受給できる遺族の条件は、亡くなった人によって生計が維持されていた「子どものいる配偶者」「子ども」です。

  • 18歳到達年度の3月31日を経過していない子ども
  • 20歳未満で障害年金の障害等級級または2級の子ども

生計が維持されていたと証明するためには、原則として遺族の前年の収入が850万円未満である、または所得が655万5千円未満であることが収入の要件となります。生計が同一であるという要件を満たす必要もあります。

遺族基礎年金の受給条件

以下のいずれかを満たした方が受給できます。

  1. 国民年金に加入している人
  2. 国民年金に加入していた人で日本国内に住所があり、年齢が60歳以上65歳未満
  3. 老齢基礎年金を受給中の人
  4. 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた人

ただし、国民年金に加入している、加入していた判断は、

  • 亡くなった日の2カ月前までの被保険者期間の中で、保険料納付期間と保険料免除期間の合計が、3分の2以上であること
  • 亡くなった日の2カ月前までの1年間に保険料支払いを滞納していないこと

という条件が付きます。国民年金をしっかり払っている方が、遺族年金の受給対象になるということです。

遺族基礎年金の受給金額

  • 子のある配偶者:777,800円 + 子の加算額
  • 子:777,800円 + 2人目以降の子の加算額

1人目、2人目の子の加算額:各223,800円
3人目以降の子の加算額:各74,600円

受給例
遺族遺族基礎年金(年額)遺族基礎年金(月額)
配偶者のみ0円0円
配偶者+子1人1,006,600円83,883円
配偶者+子2人1,231,500円102,625円
配偶者+子3人1,306,500円108,875円

遺族基礎年金は、平均標準報酬月額は関係なく、一律で支給される仕組みとなっています。

遺族厚生年金

遺族厚生年金とは

厚生年金の被保険者が亡くなった時に受給できる遺族年金のこと

を言います。

遺族厚生年金の受給対象

亡くなった人によって生計を維持されていた以下の遺族が対象です。

  • 配偶者
  • 父母
  • 祖父母
証明すべき情報

遺族厚生年金を受給できる遺族の条件は、亡くなった人によって生計が維持されていた「配偶者」「子
」「父母」「孫」「祖父母」です。

  • 18歳到達年度の3月31日を経過していない子ども
  • 20歳未満で障害年金の障害等級級または2級の子ども

生計が維持されていたと証明するためには、原則として遺族の前年の収入が850万円未満である、または所得が655万5千円未満であることが収入の要件となります。生計が同一であるという要件を満たす必要もあります。

遺族厚生年金は、子どもがいない配偶者は受給対象ではありませんが、遺族厚生年金では、子供がいない配偶者も受給対象となります。

また、遺族基礎年金の受給対象の方は、遺族厚生年金と遺族基礎年金を両方受給することができます。

ただし、

  • 受給する配偶者が30歳未満の妻:受給期間5年間
  • 55歳未満の夫:受給権なし

という条件があります。

遺族厚生年金の受給条件

以下のいずれかを満たした方が受給できます。

  1. 厚生年金に加入している人
  2. 厚生年金の加入中に初診日のある傷病が原因で初診日から5年以内に死亡した人
  3. 1級または2級の障害厚生年金を受給している人
  4. 老齢厚生年金を受給している人
  5. 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている人

ただし、厚生年金に加入している、加入していた判断は、

  • 亡くなった日の2カ月前までの被保険者期間の中で、保険料納付期間と保険料免除期間の合計が、3分の2以上であること
  • 亡くなった日の2カ月前までの1年間に保険料支払いを滞納していないこと

という条件が付きます。厚生年金をしっかり払っている方が、遺族年金の受給対象になるということです。

遺族厚生年金の受給金額

  • 亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4

亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分

  • 平成15年3月以前の加入期間:平均標準報酬月額 × 0.7125% × 加入月数
  • 平成15年4月以降の加入期間:平均標準報酬月額 × 0.5481% × 加入月数
受給例
平均標準報酬月額遺族厚生年金
20万円324,911円
30万円487,366円
40万円649,822円
50万円812,277円
60万円974,733円

遺族厚生年金は、平均標準報酬月額に比例して支給される仕組みとなっています。

遺族厚生年金は、遺族基礎年金と一緒に受給することができます。

遺族基礎年金+遺族厚生年金の合算の受給例
平均標準報酬月額配偶者のみ配偶者+子1人配偶者+子2人配偶者+子3人
20万円324,911円1,337,711円1,564,011円1,639,411円
30万円487,366円1,500,166円1,726,466円1,801,866円
40万円649,822円1,662,662円1,888,922円1,964,322円
50万円812,277円1,825,077円2,051,377円2,126,777円
60万円974,733円1,987,533円2,213,833円2,289,233円

遺族共済年金

遺族共済年金とは

組合員の方や退職共済年金等を受けている方が亡くなった時に受給できる遺族年金のこと

を言います。

遺族共済年金は、遺族厚生年金と仕組みは同じで、支給額のみが異なります。

今現在は、遺族共済年金は、遺族厚生年金に統合されましたが、統合前の平成27年9月30日以前に受給権が発生している場合は、共済年金を前提とした支給額で年金額が計算されます。

  • 平成27年9月30日以前に受給権が発生している場合 → 共済年金を前提にした支給額
  • 平成27年9月30日以降に受給権が発生している場合 → 厚生年金を前提にした支給額

死亡一時金

死亡一時金とは

25年以上、保険料を納めたにも関わらずまったく年金が支給されないような状況の場合、1回だけ妻に支給される金額のこと

死亡一時金の受給金額

約12万円~32万円

寡婦年金

寡婦年金とは

自営業者が保険料を納めた期間が25年以上あり、10年以上継続して婚姻関係がある、かつ亡くなった夫により生計が維持されていた妻に対して、60歳~65歳までの間に支給される年金のこと

寡婦年金の受給金額

60歳~65歳の誕生日までの5年間、夫が存命だった場合に受け取れたであろう老齢基礎年金額の3/4

中高年齢寡婦加算

中高年齢寡婦加算とは

遺族厚生年金を受ける妻(夫と死別した妻)が、40歳~65歳までの間、遺族厚生年金にお金を加算してもらえる制度のこと

中高年齢寡婦加算の受給金額

遺族基礎年金の満額の4分の3程度

遺族年金の受給金額の目安

夫が死亡した場合

職業 夫が自営業世帯
(国民年金)
夫が会社員世帯(厚生年金)
平均標準報酬月額
30万円
平均標準報酬月額
38万円
平均標準報酬月額
50万円
子どもあり
(18歳未満)
  遺族基礎年金 遺族基礎年金+遺族厚生年金
子ども1人の期間 1,001,600円/年
(83,466円/月)
1,482,553円/年
(123,546円/月)
1,610,807円/年
(134,233円/月)
1,803,188円/年
(150,265円/月)
子ども2人の期間 1,225,400円/年
(102,116円/月)
1,706,353円/年
(142,196円/月)
1,834,607円/年
(152,883円/月)
2,026,988円/年
(168,915円/月)
子ども3人の期間 1,300,000円/年
(108,333円/月)
1,780,953円/年
(148,412円/月)
1,909,207円/年
(159,100円/月)
2,101,588円/年
(175,132円/月)
子どもなし
(子どもが18歳
以上)
妻40歳未満の期間 0円 遺族厚生年金
480,953円/年
(40,079円/月)
609,207円/年
(50,767円/月)
801,588円/年
(66,799円/月)
妻40~64歳の期間 0円 遺族厚生年金+中高齢寡婦加算
1,064,353円/年
(88,696円/月)
1,192,607円/年
(99,383円/月)
1,384,988円/年
(115,415円/月)
妻65歳以降の期間 妻の老齢基礎年金 遺族厚生年金+妻の老齢基礎年金
777,800円/年
(64,816円/月)
1,258,753円/年
(104,896円/月)
1,387,007円/年
(115,583円/月)
1,579,388円/年
(131,615円/月)

妻が死亡した場合

職業 妻が自営業世帯
(国民年金)
妻が会社員世帯(厚生年金)
平均標準報酬月額
30万円
平均標準報酬月額
38万円
平均標準報酬月額
50万円
子どもあり
(18歳未満)
  遺族基礎年金 遺族基礎年金+遺族厚生年金
子ども1人の期間 1,001,600円/年
(83,466円/月)
1,482,553円/年
(123,546円/月)
1,610,807円/年
(134,233円/月)
1,803,188円/年
(150,265円/月)
子ども2人の期間 1,225,400円/年
(102,116円/月)
1,706,353円/年
(142,196円/月)
1,834,607円/年
(152,883円/月)
2,026,988円/年
(168,915円/月)
子ども3人の期間 1,300,000円/年
(108,333円/月)
1,780,953円/年
(148,412円/月)
1,909,207円/年
(159,100円/月)
2,101,588円/年
(175,132円/月)
子どもなし
(子どもが18歳
以上)
夫65歳未満の期間 0円 0円
夫65歳以降の期間 夫の老齢基礎年金 夫の老齢基礎年金
777,800円/年
(64,816円/月)
777,800円/年
(64,816円/月)
777,800円/年
(64,816円/月)
777,800円/年
(64,816円/月)

まとめ

遺族年金とは

家計の稼ぎ手の人(国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方)が何らかの理由で亡くなった場合に、遺族に対して支給される公的年金のこと

を言います。

遺族年金があれば、その分、遺族の生活の支えになるため、生命保険の保険金額を抑えることができます。生命保険の必要保障額を計算する際には、しっかり遺族年金の受給条件、受給金額、受給対象を把握しておく必要があるのです。